“Readyテレビ”を消費者が購入することは,ほとんどの場合,消費者が“先物買い”することを意味する。特にハイエンド製品では,数年内に来る3D時代にメーカー側が事前に備え,“Ready機能”を持つ製品を2010年に準備していく必要がある。3Dテレビの場合,先にReadyテレビを購入したユーザーは,後からメガネを追加購入すれば,3D映像を楽しむことができる。

なぜアクティブ方式か

Samsungの展示
Samsungのアクティブ方式3Dテレビの視聴光景

 この形式を取る場合,消費者側のコスト負荷のタイミングは,3Dの方式によって異なる。パッシブ方式は通常,偏光フィルタを画面に張ったディスプレイを,偏光メガネで視聴する形態となる。パッシブ方式向けの偏光メガネは1個辺り5米ドル以下のコストで生産が可能であり,メガネに対する消費者のコスト負担は非常に小さい。構造も簡単であるため,子供用,大人用などのメガネを作り分けても,問題は少ない。ただし,ディスプレイ側に数百米ドル(40型前後で200米ドル台)する偏光フィルムを張る必要があるため,セット側の価格が高騰する。単純に偏光フィルム分だけでも,テレビ・セット価格は500米ドル以上も値上がりする計算となり,“Readyテレビ”としては非常に売りにくくなる。

 そこで,ソニーやパナソニックはアクティブ方式を選択している。アクティブ方式は,シャッタ方式のメガネを用意する必要があるが,テレビ側は高フレーム・レートのディスプレイと高性能の画像回路を組み合わせることで準備が済む。従って,現在のハイエンドのテレビ・セットと比較的近いコンセプトで製品展開できる利点がある。さらに,3D対応のBlu-ray Discプレーヤや高機能ゲーム機などと組み合わせることで,“リアル・フルHD”の3D映像を視聴することができる。

Philipsの展示
Philipsのパッシブ方式3Dテレビの展示
視聴風景(上)と偏光方式メガネ(下)

 ただし,アクティブ方式の場合,前述のようにシャッタ方式のメガネを必要とする。シャッタ方式のメガネは,偏光方式のメガネとは構造が大きく異なるため,単価が高くなる。1個当たり50~100米ドル単位となる。複数人で視聴する場合は相乗的にコストが増えることから,当初は個人使用の多いゲーム・ユーザーが主体になるという見方もある。また,今回パッシブ方式で液晶テレビを展示しているLG ElectronicsやPhilipsなどは,シャッタ方式のクロストークを根強く指摘する。600Hzと言われるサブフィールド駆動を実現するプラスマ・テレビは問題ないが,液晶テレビでは240Hz駆動をしても「現在の液晶材料では5ms程度が限界」と言われており,材料面からの開発を求める声が聞かれる。

 LEDテレビが急速にコモディティ化していく中で,テレビ・メーカー各社は次世代テレビのヒントを探している。その中で,3Dテレビはコンテンツの供給やプラットフォームの形成が同時に求められることから,様々なコンテンツの供給を行うソニーや,ハリウッドとの結び付きが強いパナソニックは,非常に重要なビジネスと位置付けている。ハードウェア・デバイスの競争で劣勢に立たされた日本のテレビ・メーカーにとっては,復権への大きな光となっているといえよう。